Owned Art vol.07
田窪直樹

Pulp / POL

田窪直樹 アート作品
お酒を飲みながら、映画を観たり本を読んだりするのと同じように作品を眺めたりしている。

アート作品を「所有したい」と最初に思ったのは、いつ頃ですか?

恥ずかしい話なのですが、自分が作品を売る仕事をはじめてからです。
学生の頃から美術館やギャラリーに足を運んでいたので、おそらくぼんやりと『欲しいなぁ』と考えていたとは思うのですが、どちらかというと、自分が行なっていた表現(クラブでVJをやっていました)の糧になるような刺激を求め、作品鑑賞をしてました。学生生活が終わり、会社員をしている頃は仕事が生活の全てだったので作品鑑賞からも遠ざかっていましたが、その後26歳を前に、友人に誘われるがままに始めることになったギャラリーで、作品の距離がぐっと身近になり、所有することを意識するようになりました。学生の頃と違って、作品の先に制作したアーティストの存在をしっかりと感じられたことも大きいような気がします。

所有しているアート作品はどのように楽しんでいますか?

自宅にいくつか散りばめて設置しています。とはいえ狭く、賃貸で壁打ちも難しいので場所が限られているのですが、できるだけいろんな場所に置いて、日常の中で目に入るようにしたいなと。所有している作品全てを飾っているわけではないので、ときどき作品を掛け変えてみたり、くつろぐ時間にお酒を飲みながら、映画を観たり本を読んだりするのと同じように眺めたりしています。
あとはこのコロナ禍で展示がうまく組めなかったこともあり、運営するギャラリー&ショップPOLでコレクション展として展示もしました。また、これはまだ頭の片隅に置いているアイデアなのですが、もう一つ運営しているギャラリーPulpは一階路面でガラス張りなので、展示がない期間に例えば家に飾ることのできない大きい作品なんかを外に向かって設置し、作家を紹介するような仕掛けを作ってみてもいいかもしれないと考えています。

左から小田島等(コラージュ&ペインティング)、Hashimoto Naoko(ドローイング)、和田朋子(ガラス立体) POLでのコレクション展の様子

上__左から小田島等(コラージュ&ペインティング)、Hashimoto Naoko(ドローイング)、和田朋子(ガラス立体)。下__POLでのコレクション展の様子。

その場所で作品を並べるからこそ、作家自身も気づいていなかった"何か"に気付く場面にも遭遇した。

オンライン上で展示や作品を見ることと、実際に生で見ることの違いはありますか?

展示空間自体がある意味ひとつの作品と捉えることができるなと思っていて、それはオンラインでは味わえない部分だと思います。
作品の位置関係、並ぶ順番を追っているだけで頭の中に勝手なストーリーを作り出すことができたり、おそらく画面で単独で観るのとは違う視点を持てることがあるかと。自分がギャラリーを運営しているからこそ分かる部分かもしれませんが、その場所で作品を並べるからこそ作家自身も気づいていなかった作中の"何か"に気付く場面にも何度か遭遇しましたし、例えば、作品が設置しにくい空間の癖のような部分(中途半端な隙間や、ドアや空調設備が悪目立ちするようなところ等)にあえて作家が仕掛けていく感じなんかもそれぞれの独自性があって面白いです。

どんなアート作品をこれから所有したいと思っていますか?

同居する妻も作品をいくつか所有しているのですが、僕の所有する作品と並べると食い合わせが悪いものも多いので、どう馴染ませていくか、それを単純な妥協にするのではなく、互いに好きなものを理解し興味の幅を広げていき、面白い作品の並びを生み出せるようを探っていきたいです。それぞれの所有する作品を結びつけ、拡張させるような作品を探したいと思っています。もちろん理解されない作品もまだまだ増やしたいですし、飾ることのできる場所も死守しますが(笑)。

左:Hiraparr Wilson、右:北山雅和。 左:中村穣二、右上段左より根本敬、管弘志、右下段:長尾謙一郎

上__左:Hiraparr Wilson、右:北山雅和。下__左:中村穣二、右上段左より根本敬、管弘志、右下段:長尾謙一郎。

"なにかよく分からないけど良いもの"の存在は、まだ感じたことのない豊かさがあると希望を持たせてくれる。

あなたにとって「Owned Art(所有しているアート作品)」は、どんな存在ですか?

自分の場合、購入する作品の良さをその時点できっちり説明できることは稀で、なんとなく、ただ、強烈に『良いな』と感じて手に入れることが多いです。大げさかもしれませんが、"なにかよく分からないけど良いもの"の存在は、この世にはまだまだ感じたことのない豊かさがあるのではと希望を持たせてくれます。また、もし仮にその良さを理解できたときは新たな自分の感覚と向き合えた喜びを与えてくれます。

アート作品をこれから購入する方に向けてアドバイスなどありますか?

まずは"作品を買うかもしれない"という意識でいろいろな展示を観てみてください。『この作品は自分の部屋には大きすぎる』『この色は部屋の感じと合わない』など、単純に好きな作品とは違うかったりします。すでに作品鑑賞をされているような方なら、すぐにビビビっとくるものが見つかると思いますので、思い切りましょう。作品を買うのはコレクターで、敷居が高いものとは思わず、インテリア感覚ではじめればいいと思います。
買うと決めて会計を済ますまでの高揚感、ハマる場所を探して設置したときの気持ち良さ、溢れ出るアーティストへの応援の気持ち。作品そのものがもたらしてくれるもの以上の多くの特典を保証します。

田窪直樹(Pulp / POL)

2010年7月に大阪・南堀江にギャラリーPulp、また、2020年4月に大阪・谷町六丁目にギャラリー/ショップ”POL“をオープン。ギャラリーディレクターとして、デザイナー、音楽家、特殊漫画家、芸人など、特定の文脈に縛られることなく様々なアーティストの作品展やイベントを開催する。
また大阪に限らず東京や海外でも展示企画を行う他、 アートホテル・BnA Alter Museum(京都・河原町四条)のアートルーム / 客室のディレクション (EY∃[BOREDOMS] と共に制作) を行うなど、活動の幅を広げる。
Pulp Website
POL Website
Pulp Instagram:@pulp_gallery
POL Instagram:@pol_2020
Pulp Twitter:@PulpPictures
POL Twitter:@pol_2020

田窪直樹(Pulp / POL)